近藤勇の漢詩 辞世 其二(辞世 其の二)

作者

原文

辞世 其二

靡他今日復何言
取義捨生吾所尊
快受電光三尺劔
只將一死報君恩

訓読

辞世 其の二

他に靡いて 今日 復た何をか言はんや
義を取り生を捨つるは吾が尊ぶ所
快く受けん 電光三尺の剣を
只だ一死を将って君恩に報いん

辞世の詩

敵に降伏した今となっては、これ以上何を言うことがあろうか
命を捨てて正義を選択することこそ俺にとって重視することだ
だから、稲妻のような光を放つ三尺の剣がこの首に振り下ろされるのを快く受けよう
この一死をもって主君の恩に報いるのみだ

:伏し倒れる。服従する。
電光:稲妻の光。ここでは剣の光のたとえ。
三尺劔:一尺はおよそ30cmほど。剣はだいたい三尺ほどの長さなので、「三尺の剣」というのが常套句となっている。「三尺」だけで剣を意味することもある。
:もって。「以」に同じ。「將」は平声、「以」は仄声なので、「以」の使えない場所で「以」のかわりに用いる。

餘論

近藤の辞世の詩には二首とも「君恩」という言葉がでてきますが、この「君」というのは、やはり農民出身の自分を最終的に幕臣まで取り立ててくれた将軍であり、幕府なのでしょうね。幕末の漢詩は、尊攘の志士が作ったものが多いため、「君」といえば天皇を指すことが多いですが、ここはそうではないでしょう。