直江兼続の漢詩 織女惜別(織女別れを惜しむ)

作者

原文

織女惜別

二星何恨隔年逢
今夜連床散鬱胸
私語未終先洒涙
合歓枕下五更鐘

訓読

織女惜別

二星 何ぞ恨まん 年を隔てて逢ふを
今夜 床を連ねて鬱胸を散ず
私語 未だ終はらざるに先づ涙を洒ぐ
合歓枕下 五更の鐘

織姫が別れを惜しむ

織姫と彦星の二つの星は年に1回しか逢えないが、どうしてそれを恨んだりしよう
七夕の今夜、ふたりはベッドを共にして1年間の鬱屈した思いを晴らすのだから
だが、ささやき合う言葉がまだ尽きないうちに、もう涙が流れ出てくる
歓びを交わした枕の近くで夜明けの鐘が響いてきたのだ

二星:牽牛星(彦星)と織女星(織姫)。
私語:こっそり話す。ささやく。白居易《長恨歌》「夜半無人私語時」
:そそぐ。水をまく。水がしたたる。
合歓:歓びをともにする。男女がむつみあう。
五更:午前4時~6時。夜明け。

餘論

直江兼継の代表作といわれる詩です。題詠(あらかじめ決められた題を与えられてその題にもとづいて詩を作ること)と思われます。題詠は決められたテーマの中での創作になるため、どうしても発想が平凡になりやすく作りにくいものなのですが、さすがは戦国武将随一の漢詩人と呼ばれる兼続だけあって、うまくまとまっています。