木戸孝允の漢詩(2) 偶成
作者
原文
偶成
才子恃才愚守愚
少年才子不如愚
請看他日業成後
才子不才愚不愚
訓読
偶成
才子は才を恃み愚は愚を守る
少年の才子 愚にしかず
請ふ看よ 他日 業成るの後
才子は才ならず 愚は愚ならざるを
訳
たまたま出来た詩
秀才は自分の才能をたよりに努力を怠り、バカは自分がバカであることを自覚して努力する
だから若い時代は秀才であるよりバカであるほうがいい
見てみたまえ、将来、事業を成し遂げた後では
秀才は秀才ではなく、バカはバカではなくなっているのを。
注
才子:才能のある人物。秀才。
恃才:才能をたのんでうぬぼれる。
守愚:かしこぶらず、自分が愚かであることを謙虚に認める
他日:後日。将来。
餘論
韻字がすべて同一の字(愚)で、「才」と「愚」の2字がそれぞれ5回ずつ、「不」の字が3回出てくるという特殊な詩です。同時重出を避ける近体詩のルールからははずれていますが、この詩の場合は、内容上、重出が避けられないことが明らかでもあり、レトリックとして十分認められるでしょう。
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