後藤象二郎の漢詩 偶成

作者

原文

偶成

丹心許國死與生
豪氣欲呑横海鯨
六尺鐡槍三尺劔
秋風躍馬入新京

訓読

偶成

丹心 国に許す 死と生と
豪気 呑まんと欲す 海に横たはる鯨
六尺の鉄槍 三尺の剣
秋風 馬を躍らせて新京に入る

たまたま出来た詩

わが真心は国にささげており死ぬも生きるも国にまかせている
意気はさかんで海に横たわる鯨を呑みこんでしまおうかというほどだ
六尺の鉄の槍と三尺の剣とをたずさえて
秋風のなか、躍動する馬に乗り、新たに都となった東京に入っていく

丹心:まごころ
:まかせる
豪氣:気性がすぐれて大きく強い。さかんな意気。
:一尺は十寸。時代と地域により異なるが、一尺はおよそ30cmほど。詩文では剣の長さはたいてい「三尺」と表現される。
秋風:慶応4年(1868年)7月、江戸が「東京」と改名され、10月に明治天皇は「東京行幸」をおこない、公卿や政府高官と警護の兵とともに東京へ入った。ただし、この時点では京都が都の地位を失ったわけではなく、東西両京という状況であった。

餘論

新時代を切り開いた立役者の一人として、帝に従って、勇躍、新たな首都へ乗り込んでいく、その誇らしさがあふれる詩です。