木戸孝允の漢詩 勧學(学を勧む)

作者

原文

勧學

駑馬雖遅積歳多
高山大澤盡堪過
請看一掬泉巖水
流作汪洋萬里波

訓読

学を勧む

駑馬 遅きと雖も歳を積むこと多ければ
高山 大沢 尽(ことごと)く過ぐるに堪へたり
請ふ看よ 一掬の泉巖の水
流れて汪洋たる萬里の波と作(な)るを

学問を勧める

のろい馬だといっても長い年月をかければ
高い山でも広大な沢でもどこへでも行くことができる
見てみたまえ、たったひとすくいの泉の水が
やがて流れ流れて万里のかなたまで広がる大海になるのだ

駑馬:のろい馬。足の遅い馬。
積歳多:長い年月をかける
:~することができる
一掬:ひとすくい。少ない量。
汪洋:広々として大きなさま

餘論

愚直に努力しつづければ必ず大成する、というテーマは「偶成」と同じです。木戸自身は少年時代にすでに藩主の前で漢詩を披露して褒美を賜るなど、早熟の人でしたが、だからこそ逆に、たゆまず努力し続ける人の凄さを実感していたのかもしれません。