門生請題於余自像即綴短句述其懷云(華岡青洲) / 門生、余の自像に題するを請ふ、即ち短句を綴りて其の懐を述べて云ふ

2016年10月22日土曜日

華岡青洲


作者

原文

門生請題於余自像即綴短句述其懷云

竹屋蕭然鳥雀喧
風光自適臥寒村
唯思起死回生術
何望輕裘肥馬門

訓読

門生、余の自像に題するを請ふ、即ち短句を綴りて其の懐を述べて云ふ

竹屋 蕭然として 鳥雀 喧(かまびす)し
風光 自適にして 寒村に臥す
唯だ思ふ 起死回生の術
何ぞ望まん 軽裘 肥馬の門

弟子が私を描いた絵に詩文をかきつけるよう頼むので、絶句を作って私の思いを述べた

竹林の中の我が家は物も少なくがらんとして寂しいが、小鳥たちの声だけはにぎやかだ
ここの風景は自然と私の心に合うので、こんなさびれた村で暮らしているのだ
思うことは、死に瀕している患者を回復させる医術のことのみ
高級な皮ごろもを見にまとい、体格のいい馬を乗り回すような金持ちの家になりたいなど、どうして望むだろうか

門生:門下生。弟子。
:絵や壁などにふさわしい詩文を書きつける
短句:短い詩句。この絶句。
竹屋:竹林の中の家。あるいは庭に竹の植えてある家。
蕭然:ものさびしいさま、がらんとしたさま
鳥雀:スズメなどの小鳥
:やかましい、にぎやか。
自適:おのずから心にかなう、満足する。
起死回生:死にかけた病人の命をとりもどす。
輕裘肥馬:「輕裘」は軽く暖かな高級な皮衣、「肥馬」は肥えた立派な馬。富貴のさまをあらわす常套句。《論語・雍也》「乗肥馬、衣輕裘(肥馬に乗り、輕裘を衣る)」
:家柄

餘論

結句の「輕裘肥馬」は現代風に言えば、「毛皮のコートに高級外車」というところでしょう。そういうものと対局のところに自分の人生と医術はある、と青洲は言うのです。蕭然たる竹屋も寒村での暮らしも、この詩の中ではなんとも誇らしげです。