大久保利通の漢詩(2) 龜山陣中作(亀山陣中の作)
作者
原文
龜山陣中作
大海波鳴月照營
誰知萬里遠征情
孤眠未結還家夢
遙聽中宵喇叭聲
訓読
亀山陣中の作
大海 波鳴って 月 営を照らす
誰か知らん 万里遠征の情
孤眠 未だ結ばず 家に還る夢
遥かに聴く 中宵 喇叭の声
訳
亀山の陣中での作
広い海の波がとどろき、月は陣営を照らしている
故郷から万里も離れた地へはるばる遠征して来ている者の思いが、いったい誰にわかるだろう、来ているものでなければわかるまい。
独りさびしく眠っていると、故郷の家に帰る夢を見る前に
遥か遠くから真夜中のラッパの音が聞こえてきて目を覚まされた
注
龜山:台湾屏東県恒春鎮にある小山。台湾出兵時、日本軍は琅嶠湾に面する射寮という地に上陸したが、その湾の南に龜山は位置する。上陸した日本軍は最初、琅嶠湾に注ぐ2本の川にはさまれた土地に第1宿営地を、さらに龜山の南側に第2宿営地を設け、そこを拠点として石門、そして牡丹社集落へと軍を進めた。牡丹社攻略後は一部の守備隊を残し、本体は宿営地へ戻った。台湾出兵については「訪石門戰場偶成」を参照。
中宵:真夜中、夜半。
喇叭:ラッパ。軍中ではラッパは信号ラッパ、号音ラッパなどと呼ばれ、起床や食事、送迎、課業開始、突撃など、さまざまな場面の合図として用いられた。ここでは夜中に鳴っているので起床や食事などのラッパのわけはなく、突撃ラッパなど戦闘に関するラッパの音であろう。
餘論
真夜中にラッパの音で目を覚まされたというエピソードを詠みこんだことで、臨場感とリアリティーのある詩に仕上がっていると思います。
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