徳川光圀の漢詩(3) 正木湖卽詠(正木湖即詠)
作者
原文
正木湖卽詠
正木湖邊棹夕暉
水煙風暖晩涼微
暫時倚枻放望眼
點破靑松白鷺飛
訓読
正木湖即詠
正木湖辺 夕暉に棹させば
水煙 風暖かにして 晩涼 微なり
暫時 枻に倚りて望眼を放てば
青松に点破して白鷺飛ぶ
訳
真崎浦で見たままを詠む
真崎浦の辺りで夕陽のなか舟をこげば
水上にもやがたなびき、風はなまぬるいが、夕暮れの涼しさが微かに感じられる
しばらく櫂によりかかって遠くを望み見ると
青い松にくっきり点を打つようにシラサギが飛んでいく
注
正木湖:真崎浦(まさきうら)。茨城県那珂郡東海村の地名。かつては周囲約4.5km、東西2km、南北800m、面積約136ha、水深4~5mの沼地で、正木浦とも書いた。鎌倉時代までは村松海岸の入江であったものが、久慈川から流出した土砂や黒潮に運ばれた砂により入江の口が埋められ潟湖化したといわれる。安政3年からはじまった干拓事業が昭和13年に完了して現在は水田地帯となっており、湖は存在しない。
棹:棹さす。舟をこぐ。
夕暉:夕陽。
枻:櫂。舟をこぐ道具。
放望眼:遠くを望み見る
點破:「破」は強調の助字。「點」は点を打つ。
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