島津久光の漢詩(1) 暮春山荘
作者
原文
暮春山荘
山風陣陣拂簾帷
幽檻方看竹樹滋
蜂蝶不知春色減
尋芳幾度上空枝
訓読
暮春山荘
山風 陣陣として簾帷を払ふ
幽檻 方に看る 竹樹の滋きを
蜂蝶 知らず 春色の減ずるを
芳を尋ねて幾度か空枝に上る
訳
晩春の山荘
山風がとぎれとぎれに吹いて簾を払い
しずかな欄干で竹や樹木が茂っているのを目の当たりに見る
蜂や蝶は春景色がもう少なくなっていることを知らず
花を探し求めて何度となく花の散ってしまった枝にやってくる
注
陣陣:とぎれとぎれに
簾帷:すだれととばり。あるいはすだれ。
幽檻:しずかな欄干。
芳:花
空枝:何もない枝。花が散ってしまった枝。
餘論
すでに散ってしまった花を探し求めてやってくる蜂や蝶の姿から寓意をよみとることは可能です。もし、この詩が作られたのが維新後だとすれば、詩中の蜂蝶は、新政府の諸改革に反対して何度も旧習復帰の建白をおこない、文明開化によって失われた古きよき日本の回復を求めた作者自身の姿だと見ることもできます。ただ、私自身の個人的な好みでは、純粋な叙景詩として読んだほうが趣深いと感じます。
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