中岡慎太郎の漢詩(1) 録近誓(近誓を録す)
作者
原文
録近誓
潔身何用隠兼遁
埋骨豈嫌海又山
住世報恩男子事
任他群小喚爲頑
訓読
近誓を録す
身を潔むるに何ぞ用ひん 隠と遁とを
骨を埋むるに豈に嫌はんや 海又山を
世に住みて恩に報ひるは男子の事
さもあらばあれ群小の喚んで頑と為すは
訳
近頃の心の誓いを記録する
身をきよめるために、どうして隠遁する必要があるだろうか
死んで骨を埋める際に、どうして海や山を嫌がることがあるだろうか(きちんとした墓などなくてかまわない)
この浮世に住んで恩にむくいることこそ男子の仕事
小人物たちの群れが私のことを頑なだと批判するのなど、かまいはしない
注
隠兼遁:「兼」は「與」と同じく並列をあらわす助字、「~と・・・」。したがって文字どおりには「隠れることと遁げること」ということだが、要は詩の都合上、「隠遁」を2つに分けて「兼(と)」で結んだだけである。
任他:「遮莫」とおなじく「さもあらばあれ」と訓じ、「以下のことはどうでもいい、気にしない」の意味。
餘論
中岡慎太郎の生き方が伝わってくる詩です。「どんなに矛盾と欺瞞に満ちた世の中でも、その中で必死にもがき苦しみながら事をなすことこそ、自分の生き方、それを頑迷とそしるなら、そしればよい」-そんな心意気でしょうか。
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