夏目漱石の漢詩(1) 題自畫(自画に題す)
作者
原文
題自畫
厓臨碧水老松愚
路過危橋仄徑迂
佇立筇頭雲起處
半空遙見古浮圖
訓読
自画に題す
厓は碧水に臨んで 老松 愚なり
路は危橋を過ぎて 仄径 迂なり
佇立す 筇頭に雲起こる処
半空 遥かに見る 古浮図
訳
自作の画に題する
崖はみどりの水に臨んでそびえ、そこには老いた松が愚直に生えていて
道は高くに架かる橋を通り、そこからさらに傾いた小道がまがりくねって続く
杖のそばから雲が湧きおこる場所でたたずむと
空の中ほどに遥か遠く、古い寺の塔が見える
注
厓:崖に同じ。
危橋:高くに架かる橋。
仄徑:傾いた小道
迂:まがりくねる。まわりくどい。
佇立:たたずむ
筇頭:筇はつえ。杖のそば。
半空:空の中ほど。
浮圖:寺の塔。あるいは寺。
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