直江兼続の漢詩(3) 天正七年歳旦
作者
原文
天正七年歳旦
冬風吹盡又迎春
春色悠悠晷運長
池上垂糸新柳緑
檻前飛氣早梅香
訓読
天正七年の歳旦
冬風 吹き尽くして又春を迎ふ
春色 悠悠として晷の運(めぐ)ること長し
池上 糸を垂らして新柳 緑に
檻前 気を飛ばして早梅 香る
訳
天正7年(1579)の元旦
冬風が吹き終わって、今また春を迎える
春景色はゆったりとして日のめぐりは冬とちがってゆっくりしている
池のほとりでは柳の新緑が糸のような枝を垂らし
欄干の前では早咲きの梅がかぐわしい香りを漂わせている
注
歳旦:元旦
晷:日光。日の影。日時計の影。
檻:欄干。
餘論
兼続19歳の年の元旦の詩です。後半の2句はきれいな対句になっていますし、全体の内容もうまくまとまっています。起句の踏み落とし(本来韻を踏むべきところで韻を踏まないこと)は仄声にすべきところ、平声の「春」になっているのが気になる点ですが、兼続が若いころからすでにかなりの教養と作詩力を備えていたことを示している詩です。
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