大塩平八郎の漢詩(4) 早春郊行即事
作者
原文
早春郊行即事
踽踽涼涼稀友生
春郊獨自曳笻行
村梅不似世人意
一笑向吾無限情
訓読
早春郊行即事
踽踽 涼涼 友生 稀なり
春郊 独自に笻を曳きて行く
村梅は似ず 世人の意に
一笑 吾に向かふ 無限の情
訳
早春の郊外を散歩して即興で作った詩
私は孤独で親しむものもなく、友人も少ない
春の郊外を自分ひとりで杖をつきながら歩いていく
村の梅だけは世間の人とは違っていて
私に向かってほほ笑むように咲き、尽きることのないやさしさを示してくれる
注
郊行:郊外の野原を歩くこと
踽踽:独りで行くさま。
涼涼:親しみのないさま。
友生:友人
一笑:「笑」には「わらう」のほか「花が咲く」の意味もある。ここは両方の意味を兼ねているのであろう。
餘論
大塩平八郎は狷介な性格で、自分にも他人にも厳しかったため、親しい友人は少なかったようです。奉行所内の不正の摘発などでは同僚に対しても容赦がなかったため、周囲には冷やかな目で見る者が多かったといいます。そんなことにひるむような大塩ではありませんが、時には孤独を感じることもあったのでしょう。「私にやさしく微笑みかけてくれるのは梅の花だけだ」という、弱音とも開き直りともとれる呟きは、ひとり散歩に出掛けてふと気持ちを緩めたときにこぼれた本音だったと思います。
コメント
0 件のコメント :
コメントを投稿