洗心洞裏新夏即事(大塩平八郎)

2016年11月13日日曜日

大塩平八郎


作者

原文

洗心洞裏新夏即事

讀書之外人聲少
啼鳥之中燕語新
況此雨零花盡静
宛如卜築避風塵

訓読

洗心洞裏新夏即事

読書の外 人声少なく
啼鳥の中 燕語新たなり
況んや 此の雨零(お)ち花尽きて静かなるをや
宛かも卜築 風塵を避くるが如し

洗心洞の中の初夏をそのまま詠んだ詩

塾生が本を読む声以外に人の声は少なく
鳥が鳴く声の中に燕の声が新たに加わった
普段から静かな塾ではあるが、ましてこんなふうに雨が降り花も散って静かな季節はなおさらで
まるで浮世を離れた地に引っ越したかのようだ

洗心洞:大塩平八郎の室号(自室につける呼び名)。弟子たちは先生の家を訪れて教えを受けるので、先生の室号はそのまま塾の名前でもある。
:うち。なか。
即事:景色やできごとをそのまま詠むこと。またその詩。
花盡静:「花尽きて静か」と読むか、あるいは「花尽く静か」とも読める。ここでは前者の意に取った。
卜築:土地のよしあしを占って家を建てる。転じて居所を定める、引っ越す。
風塵:風に吹きおこる塵。転じて塵にまみれた世の中。浮世。俗世。

餘論

大塩先生の授業は非常に厳しく、弟子たちは緊張のあまり大塩先生の顔を見ることもできなかったというほどですから、授業中の私語などは絶対にありえず、実際にこんなふうに静寂に包まれていたのでしょう。しかも授業は毎朝5時から始まったのだそうで、大塩先生と門弟たちのストイックさに頭が下がります。