大久保利通の漢詩 下最上川(最上川を下る)

作者

原文

下最上川

千章夏木雨痕鮮
一棹孤舟下大川
屈曲淸流奇絶處
米家水墨是天然

訓読

最上川を下る

千章の夏木 雨痕 鮮やかに
一棹の孤舟 大川を下る
屈曲する清流 奇絶なる処
米家の水墨 是れ天然

最上川を下る

彩りあふれる夏の木々は雨上がりの色鮮やかに
一隻の小舟が大河を下っていく
清流が曲がりくねって景色がすばらしいところを見ると
まるでかの米芾の水墨画のようだが、実は画ではなく本物の自然なのだ

千章:「章」は「美しい模様、飾り、彩り、あや」の意味。彩りあふれるさま
雨痕:雨にぬれたあと。
一棹孤舟:一隻の舟。「棹」は舟をこぐ際に用いる「さお」だが、舟を数える量詞としても用いる。
奇絶:すぐれてめずらしい。非常に素晴らしい。
米家:米芾。北宋の画家・書家・文人(1051~1107)。

餘論

明治9年6月、大久保利通は置賜・山形・鶴岡の3県(8月にこの3県は合併して山形県となる)を巡視し、6月12日に最上川を舟で下っています。この詩はその際に作られた詩です。