題不二石(高杉晋作) / 不二石に題す

2017年6月21日水曜日

高杉晋作 富士山


作者

原文

題不二石

誰道天工勝人作
不知人作勝天工
萬尋富嶽千秋雪
卻在斯翁一掌中

訓読

不二石に題す

誰か道(い)ふ 天工は人作に勝ると
知らずや人作の天工に勝るを
万尋の富岳 千秋の雪
却って斯(こ)の翁の一掌中に在り

富士山のミニチュアに題す

天然の造作は人工の技術に勝るなどと、いったい誰が言うのか
人工の技術が天然の造作に勝ることを知らないのだろうか
万尋の高さにそびえる大きな富士の山も、その万年雪も
人工の技術をもってすれば、この私の小さな掌の中におさめることができるのだ

不二石:富士石。富士山の形に似せて作った石の置き物であろう。
道:言う。
天工:天然の力でつくられたもの。自然のわざ。
人作:人間が作ったもの。人工物。
萬尋:非常に高いこと。「尋」は中国古代(周~戦国)で8尺(約180cm)にあたる長さの単位。
富嶽:富士山
千秋:千年。永遠。
斯翁:文字通りには「この老人」の意味だが、ここでは高杉自身のこと。

餘論

富士山のミニチュアを詠んだ高杉晋作の詩です。平成27年(2015年)のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」の中で高杉晋作(演:高良健吾)が松下村塾を訪ねてきた際に朗々と吟じていたのがこの詩です。脚本家がなぜこの詩を選んで吟じさせたのかはわかりませんが、才気走った若き高杉のイメージをあらわすのにちょうどいいと思われたのかもしれません。確かにこの詩は、「天然より人工のほうがすぐれている」という奇を衒ったコンセプトといい、起句・承句のレトリックといい、「富士山は俺の手の中にある」というまとめ方といい、全編、高杉のドヤ顔が透けてみえる作品です。