夏目漱石の漢詩(7) 山路觀楓(山路に楓を観る)
作者
原文
山路觀楓
石苔沐雨滑難攀
渡水穿林往又還
處處鹿聲尋不得
白雲紅葉滿千山
訓読
山路に楓を観る
石苔 雨に沐し 滑りて攀じ難し
水を渡り林を穿ち 往きて又た還る
処処の鹿声 尋ね得ず
白雲 紅葉 千山に満つ
訳
山道で楓を観る
石に生えた苔が雨にぬれて滑りやすくなり山道を登りにくい
川を渡り林を抜け、行ってはまた戻ってくる
あちこちから鹿の声が聞こえてくるが、その姿を見つけることはできない
白い雲と真っ赤なもみじが山という山に満ちあふれているからだ
注
沐雨:雨で髪を洗うこと。ここでは苔を髪にたとえ、苔が雨にぬれているさまをいう。
穿林:林を通り抜ける
尋不得:「尋得」の否定形。「尋ねることができない」。探し当てることができない。
千山:たくさんの山。
餘論
第一高等学校在学中の明治22年11月に執筆した文語による小品「山路観楓」の中に掲載されている詩です。
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