後水尾天皇の漢詩(1) 窗前栽竹(窓前 竹を栽う)
作者
後水尾天皇
原文
窗前栽竹
新竹崢嶸涼始生
窗前從是慰詩情
夏宜急雨冬宜雪
也恐淸陰礙月明
訓読
窓前 竹を栽う
新竹 崢嶸として 涼 始めて生ず
窓前 是れより 詩情を慰む
夏は急雨に宜しく 冬は雪に宜し
也た恐る 清陰 月明を礙るを
訳
窓の前に竹を植える
新たに植えたばかりの竹がすっくと聳え立ち、涼しさが新たに生じた
これからはこの竹が窓の前にいて詩情を満足させてくれるだろう
夏の夕立ちがそそぐ音は気持ちよく、冬の雪が積もるさまも素晴らしいだろう
それでも恐れるのは、その清らかな葉陰が月明りをさえぎってしまうほど茂ってしまうことだ
注
崢嶸:山などが険しいさま。ここは竹が高くそびえたつ様子のことか
也:通常は「~もまた」の意で用いることが多いが、ここでは「それでも、それだのに」の意。起句から転句まで竹の素晴らしさを述べてきたのを受けて「それでも月明りがさえぎられるのだけは心配だ」というわけである
餘論
江戸幕府成立後に初めて即位した天皇、いわば江戸時代最初の天皇である後水尾天皇の詩です。幕府の了解を得るどころか、通告すらせずに突然の譲位を強行するなど、強烈な個性で幾度も幕府と衝突した天皇ですが、この詩からはそのような感情の激しさは全く感じられず、むしろ透明感のある爽やかさが漂っています。学問好きであったと伝わるだけあって、基礎がきちんと確立しており、奇をてらうことのない素直な詠みぶりに好感が持てます。実際に御所に竹が植えられたのを詠んだという可能性もないわけではありませんが、おそらくはあらかじめ題を決めて詠まれたものでしょう。

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